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アルミ溶接・アルミ板金加工について

アルミ溶接はなぜ難しいのか?トラブル事例も解説

溶接板金加工.comが手掛けるアルミ溶接に関する記事を作成しました。

当社には他社では品質レベルが安定しない・断られてしまった「アルミの溶接」案件を数多くご相談いただきます。

溶接歪みで精度が出にくいとされる「アルミ溶接」について、大手製造業からも高い評価をうけ、溶接技術に強みを持つ加工会社の視点から情報をお伝えします。

1.そもそも、アルミ溶接はなぜ難しいのか?

アルミ溶接は、その特性から他の金属の溶接に比べて難易度が高いとされています。

アルミニウムは、融点が低いにもかかわらず、表面に強固な酸化皮膜を形成するため、溶接時にこの酸化皮膜を除去し、良好な溶融状態を作り出す必要があります。

また、熱伝導率が高いため、溶接部に十分な熱量を集中させることが求められます。さらに、溶接時の急激な温度変化により、ひずみや割れが発生しやすいという課題もあります。

このような特性を持つアルミニウムの中厚板や厚板の溶接は、薄板に比べてさらに高度な技術と経験が要求されます。

板厚が増すほど、より多くの入熱量が必要となり、それに伴い、溶接部の変形や残留応力も大きくなる傾向があります。そのため、事前の綿密な溶接プロセスの検討(どの溶接箇所をどの順番で行うのか?計画や、熟練した溶接技能者の手による丁寧な作業が不可欠となります。

2.アルミ溶接でよくある不具合

アルミ溶接では、特有の不具合が発生しやすいことが知られています。代表的なものとしては、以下のような点が挙げられます。

  • 溶け込み不良:母材と溶接金属が十分に溶け合わず、接合が不完全になる現象です。アルミニウムの高い熱伝導率により、溶接熱が拡散しやすく、必要な溶融深さが得られない場合に発生します。不適切な溶接条件や、溶接速度が速すぎるなどが原因として考えられます。
  • 割れ: 溶接部やその近傍に発生する亀裂です。アルミニウムは凝固収縮が大きく、溶接時の熱応力によって割れが発生しやすい性質を持ちます。特に、中厚板や厚板の溶接では、拘束力が大きくなるため、割れのリスクが高まります。溶接材料の選定ミスや、不適切な予熱・後熱処理も割れの原因となります。
  • ひずみ: 溶接時の熱影響により、母材が収縮したり変形したりする現象です。アルミニウムは線膨張係数が大きいため、溶接による局所的な加熱と冷却によって大きなひずみが生じやすいです。板厚が増すほど、ひずみの影響も大きくなる傾向があります。
  • 寸法不良:アルミ二ウムは縮みやすい材質の為、溶接箇所と入熱時間からサイズを十分に考慮しないと寸法不足や、変形を発生させる場合があります。そのため、溶接工程を踏まえ、縮み量を計算した寸法管理のノウハウが必要です。
  • 外観不良: スパッタ(溶接時に飛散する金属粒)、アンダーカット(溶接金属と母材の境界にできる溝)、オーバーラップ(溶接金属が母材に溶け込まずに重なる)、不均一なビード形状など、溶接部の外観を損なう不具合です。これらは、溶接条件の調整不足や、溶接技能者の技術不足によって発生することがあります。

これらの不具合は、製品の強度や耐久性を低下させるだけでなく、外観品質を損なう原因ともなります。

特に、高い精度や品質が求められるアルミの中厚板、厚板溶接においては、これらの不具合を未然に防ぐための高度な技術と管理体制が不可欠となります。

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